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column.5 がんの治療 その他の療法
免疫療法
人間のもつ自然治癒力、つまり免疫力を強化して病気を治療する療法が免疫療法です。私たちの体内では、健康な人で毎日5000個程度のがん細胞が発生していると言われています。しかし、それでもがんにならないのは、体の中でがん細胞を排除する免疫力が機能し、異常を生じた細胞を排除しているからです。この自己の免疫力を高め、がんの治療に役立てるのが免疫療法で、免疫細胞療法、ワクチン療法、サイトカイン療法、生体応答調節慮法(BRM療法)、抗体療法、遺伝子療法などがあります。
免疫細胞療法
白血球の一種で免疫機能を担当する細胞がリンパ球です。このリンパ球の働きを人為的に強化してがんの治療を行うのが、免疫細胞療法です。
ワクチン療法
がんの免疫原性をもち、がんの抗体を誘発するワクチン製剤を体内に投下することにより、がんに対する免疫力を高め、がんの予防や治療を行なう療法です。免疫細胞が特異的にがん抗原を認識して攻撃すれば、正常細胞を攻撃することなく、つまり副作用なく、抗がん作用を機能させることができるとい利点があります。一般にワクチン製剤療法と自家ワクチン療法があります。
サイトカイン療法
免疫に関与する低分子の特定のタンパク質の総称のことをサイトカインといいます。このサイトカインを製剤として合成して人体に投与し、免疫力を高める療法がサイトカイン療法です。分子生物学の発展により、免疫細胞が分泌するサイトカインの分子構造が解明できるようになり、インターフェロン-α、-β、-γなどを含め、現在100 種類以上が知られています。
BRM療法
生体応答調節剤療法(Biological Response Modifiers)の略で、免疫賦活作用のある物質を体内に投与して、免疫活性を喚起しようというもので、非特異的免疫療法の一つです。代表例がキノコ製剤で、治療薬として国から承認されているクレスチン、レンチナンや、各種の健康食品もここに含まれます。微生物製剤としては、結核菌から作られる丸山ワクチン、溶連菌を抗生物質ペニシリンで不活性化し乾燥したピシバニールがあります。その他に、サメ軟骨、海藻類、穀物抽出製剤などもBRM製剤に含まれます。
抗体療法
特定のがん抗原にだけ結合する抗体を体外で作成し、これを体内に投与する治療法です。多種多様のがん抗原が存在するなか、ある抗原にだけ結合できる単一の抗体を、モノクローナル抗体(抗腫瘍抗体)と呼びます。近年、モノクローナル抗体を作製する方法が確立され、治療の研究が進められています。
遺伝子療法
がん抑制遺伝子P53を、がん患者の体内に大量に追加投与してがんを治療する方法です。 P53は、強力にがんをアポトーシス(細胞消滅)に導く働きをしたり、傷ついた細胞を修復する遺伝子です。このP53遺伝子を、ベクターと呼ぶ運び役に入れて、1回当たり約1兆個をがん患者の細胞核内に送り込み、がん抑制機能を復活・向上させてがんを治療します。
その他の療法
免疫療法の他に、以下のような療法もがん治療として行われています。
温熱療法
温熱療法は、がん細胞が正常細胞と比べて熱に弱いという性質を利用した、がんの治療法です。全身を加温する全身温熱療法と、がんやその近くを温める局所温熱療法があります。一般には局所温熱療法が主に行われる方法で、マイクロ波や電磁波を用いた装置で局所を温めます。
ホルモン療法
乳がんのうち7割が女性ホルモンのエストロゲンの刺激によって、増殖しますが、これを薬を用いてエストロゲンの作用を阻害・抑制し、がん細胞を死滅させるのがホルモン療法です。エストロゲン自体を作らなくする方法と、ホルモンが作用する部分(受容体)に付いてエストロゲンが結合するのを阻止する方法があります。
造血幹細胞
血液のがんである白血病や悪性リンパ腫の治療の場合、腫瘍細胞は根絶するため大量の抗がん剤治療や放射線治療を行いますが、患者の正常な血液をつくる組織も破壊されてしまうため、これを再生させるために自己または他人の造血幹細胞を移植し、血液組織の再生を行います。これが、造血幹細胞療法です。造血幹細胞を採取する場所により、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植と分かれます。
超高度濃度ビタミンC点滴療法
一度の点滴でおよそ50グラム以上のビタミンCを投与する療法です。選択的にがん細胞だけをたたくことができるといわれています。経口からサプリメントとして摂った場合と静脈からの投与の場合とで、ビタミンCの血中濃度に大きく差が出るのが特徴です。米国では、近い将来「抗ガン剤」として正式に認可される可能性が充分あるといわれています。
血液オゾン療法
血液が疲れドロドロになると、活性酸素への抵抗力を弱め、また免疫不全を引き起こし、老化やがんを誘発することが指摘されています。これに対し、オゾンを用いて血液を浄化し細胞の活性化を図り免疫力を高めるのが血液オゾン療法です。体外で血液とオゾンガスを混ぜ、それを再び本人に戻す自家血液オゾン療法が一般的です。
鍼灸治療
鍼灸により、免疫力の改善、また術後の痛みの抑制などを行うのが、鍼灸治療です。鍼灸治療で副交感神経を持続的に刺激すると、全身の血流がよくなり免疫力が高まり自然治癒力を引き出すことになり、がんの抑制を可能にすることが指摘されています。
ホルミシス療法
微量で低レベルの放射線を浴びることにより、免疫力を高めるがんの治療を行う療法です。放射線治療では、高線量の放射線を用いることにより腫瘍患部をたたくことを目的にしていますが、ホルミシス療法は、低線量の放射線を使用することによりがん抑制遺伝子であるP53を活性化し、またリンパ球の増加を促すことを目的としています。微量の放射線は、一般に天然ラジウム鉱石やラジウム温泉から発生するものを利用します。
食事療法
ガンの原因となる食品を排除し、自然な食物の持つ様々な栄養素をバランスよく摂取することによって 人間が本来持っている身体の機能を高め、がんを抑制、排除しようとする療法です。
健康食品・サプリメント
抗酸化作用や免疫増強作用を有する食品やサプリメントを、積極的に摂取することで、がんの発生、抑制および再発予防を行うものです。
活性酸素や発がん物質の害を軽減するもの、免疫機能を活性化・増強するもの、あるいはがん予防の食生活で推奨されているオメガ3系不飽和脂肪酸を含む魚油、大豆イソフラボン、食物繊維、茶カテキン、乳酸菌などを製品化したものが主なものです。